英国の経済紙「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」では、長期的なデータを中心としたビジネスアプローチにより、既存購読者を維持しながら新規購読者を獲得し、目標の100万人有料購読者数を、予定よりも1年早く達成した。

フィナンシャル・タイムズは、デジタル定期購読者の数が、紙媒体を含めた全体の購読者数の4分の3以上を占めていることも発表している。昨年には5億ドル(約560億円)の売上と3300万ドル(約36億円)の利益獲得という最高記録も出している。

フィナンシャル・タイムズCEOは、この成功を、デジタル定期講読(サブスクリプション)の強化と、虚偽ニュースを検知するレポーティングによるものだと述べている。

出版社の間で、デジタル上で様々な有料定期購読のサービスが展開される中、フィナンシャル・タイムズは17年かけて目標の100万人を今回達成した。その裏には、ペイウォール(無料閲覧回数に制限をかけて、有料購読者に登録を促す方法)の方法から、2015年に料金の引き下げと1ヶ月の無料トライアルの提供にシフトした背景がある。

フィナンシャル・タイムズの試行錯誤はそれだけでない。フィナンシャル・タイムズでは、データサイエンスの力を使い、ユーザー行動を分析してきた。どのコンテンツがよく見られているか、どれくらいの人がウェブサイトに訪れているか、訪問者につきどれくらいのコンテンツが読まれるか、そして新規購読者の数と解約率も分析されてきた。

またフィナンシャル・タイムズでは新しいKPI指標として「Quality Reads(質の高い読み)」を使っており、ページの滞在時間と下へのスクロールのデータから、読者が記事の半分以上を読んだ割合をパーセントで出している。

その他にも、視覚化されたデータの使用、ゲームなど、新規購読者を増やすために様々なコンテンツスタイルが試されてきた。中には、アートとジャーナリズムの分野を合体させた「Cry from the Irish Border」(英国EU離脱がアイルランドの国境に与える影響を語ったもの)という、国境で撮影された映像や詩を配信するコンテンツも作られた。

また若年層にリーチを広げるため、学生や教師にフィナンシャル・タイムズのコンテンツを提供することで、フィナンシャル・タイムズファンを育てることにも力を注いでいる。

もちろん、コンテンツの幅も広げられている。女性に向けて女性が書いた「Long Story Short」シリーズ、投資やM&Aなどの取引に際して行われる、資産の調査活動のストーリーなどから、定期的な読者を増やそうという努力もされている。

フィナンシャル・タイムズでは、2018年にウェブサイトのプッシュ通知を導入しており、記事が読まれる量や頻度、そして最新の記事が読まれる確率が増えたとも述べている。

100万人を達成したフィナンシャル・タイムズではあるが、まだ伸び代は大いにあるという。ロイターの調査データによると、有料記事に支払いをすると述べる人が英国に500万人いることもわかっている。またフィナンシャル・タイムズの既存購読者のうち70%がすでに英国外からきていることもあり、今後も購読者を伸ばす戦いは続くと