多くの出版社が、継続的な売上が見込める収入源を確立するために、デジタルを活用している中、将来も見越して若いユーザー層をターゲットにする企業が出てきている。

その例として、英国紙の「The Economist」「The Telegraph」「The Financial Times」 は、これまでデジタル戦略で若者層を獲得することに成功している。

例えば、「The Telegraph」では、2016年にペイウォール(無料閲覧に制限をする仕組み)を導入した際に、若者ユーザーを念頭において、同社のニュースアプリのデザインを変更した。

その結果、ペイウォール導入前のターゲット層が35歳以上だったのに対し、リニューアル後は18-34歳のユーザー層が急増。カスタマーオフィス長のRobert Bridge氏によると、定期購読登録率はアプリ経由が1位を占めているという。

一方で「The Economist」では、これまで学生を狙ったキャンペーンを行っている。2017年9月から、「The Future of Work」をテーマにしたコンテンツ記事へのアクセス・イベントを、大学生に向けて提供している。アプローチ方法としては、定額購読(サブスクリプション)のサービスを大学生の年齢層に向けて広告を打ち出しており、広告のデザインやコピーは一貫性のあるものを心がけ、コピー内容も「Some trends need more than a hashtag(ハッシュタグだけじゃもったいないトレンドたち)」などと若年層が心惹かれるようなものになっている。

若年層は特に有料のサービスに取り込むことは難しいとされている。しかし、NetflixやSpotifyといった価値が見出せるサービスにはお金を出す傾向になる。課題は、お金を払ってでもコンテンツ記事を読みたいと思ってくれるような、ファンコミュニティにリーチをしていくことである。

若年層の間で信頼を築きファンを育てることに成功しているのは、「The Financial Times」の無料スクールプログラムである。このプログラムでは、毎週届くニュースレターを通して、学校のカリキュラムに関連したトピックの記事を読むことができる。これは、学生に 「The Financial Times」のコンテンツに慣れさせることで、最終的にいつか有料会員になってコンテンツを読んでほしいという狙いがある。

このプログラムのきっかけになったのは、「The Financial Times」のロンドン社で行われた職場体験で、10代の学生が、学校のカリキュラムに関連のあるニュースコンテンツを学生に無料で提供するべきだと答えたことである。スポンサーとの提携であれば無料でこの提供が実現だと考えた。

この考えを元に、「The Financial Times」ではロイズ銀行をスポンサーにつけて、スクールプログラムを開始し、2週間で英国の1,500校から16,000人の学生または教師が登録した。2018年にはプログラムを海外にも拡大し、現在では世界中から2,300校が参加するプログラムとなっている。参加学校は1,700校が英国から、100校が米国からであり、中には英語が第二言語である中国からも参加がある。


「The Financial Times」では、提供するコンテンツを最大限に使ってもらえるよう、教師との関係づくりも築いており、これまでに2万人の教師に毎週ニュースレターを送っている。ニュースレターでは、経済や政治、外交問題などのコンテンツや、授業で使えるようなクイズなども含まれている。

また学生との関係を深めるため、「The Financial Times」ではクイズ選手権や作文大会を学生のためにも主催している。賞品はサイト FT.comに記事が掲載されること、そして「The Financial Times」やその他提携先のイングランド銀行、王立国際問題研究所、世界銀行が主催する年間イベントに参加できる券をもらうことができる。

「The Financial Times」では、このような活動を続けることで、若年層と長い関係を築き、最終的には有料会員になってコンテンツを購読してほしいとの願いが込められている。