新聞・雑誌などの出版業界にサブスクリプション、デジタルコンテンツの無料閲覧制限などが導入され始めデジタル化へのシフトが進む中、多くの企業が収益化に課題を感じている。1年分の有料プランを払う人は、会員のうち5%にとどまるなど、高額の定期購読プランに二の足を踏む人は多い。

この現状を打破するための代替案として参考にできるのが、今様々なサービスで見られる「少額決済」モデルである。他の業界でこの少額決済がどう使われているのだろうか。

事例① Twitch

Twitchはアマゾンが提供するライブ配信サービスである。特にゲーマーの間で人気を集めているこのサービスは、コンテンツ閲覧を無料で提供しており、アプグレードすることでチャットルームへのアクセスや広告なしでの閲覧が可能である。このプライム会員のサブスクリプション費用は4.99ドル〜24.99ドルからアクセスが可能である。

このTwitchが導入する少額決済が、Twitch通貨のビッツ(Bits)である。100ビッツを1.4ドルから購入でき、視聴したコンテンツが気に入った時「チアー」(Cheering)としてビッツをチップ代わりに払うことができる。Twitchはこのチップによる収入の20〜40%分をマージン費用としてとるという仕組みである。

だがこの少額なBitsからそこまで売上を期待できないと思われるが、今月このチアーだけで700万ドル(約7億9千万円)の収益を獲得したと発表している。このように、サブスクリプションとして定額費用を払うほどコミットはしたくないが、良いと思ったコンテンツに少額でも払い感謝の意を示すことができるチアー機能は、Twitchユーザーの心を上手く掴んだと言える。

事例② 英紙ガーディアン

英紙ガーディアンは、寄付金では収益を生むことはできないという業界の固定観念を覆すような結果を出した。それが、2016年からガーディアン紙で出された「お恵み器(Begging Bowl)」という、サイズの違う異なる色の器をサイト上で表示し寄付金を集める活動である。

ガーディアン紙は今年の春に、30万人の寄付者と30万人のメンバー会員から寄付金を集めることに成功し、今年の終わりには支出を相殺できるほどの収入額になると予想されている。

この寄付金システムの成功の秘訣は、寄付プロセスを簡易にしたことと、少額での寄付を可能にしたことが大きいと言う。少額決済ができる利便性と、寄付金の額のオプション表示で、当初の予定よりも多めの金額を結局寄付した人も多かったという。

事例③ WeChat

少額決済の成功例は、FacebookとSnapchat、Instagram、WhatsApp、Messenger、Apple Payなどの多くのアプリを一元化した中国のアプリ「WeChat」にも見ることができる。 WeChatは10億人のユーザーを持ち、その機能はただのSNSを超えている。なんとユーザーはWeChatを使ってゲームを購入したり、デートの相手を見つけたり、送金をしたり、ビデオ通話をしたり、食べ物の注文をしたり、予約をしたり、ニュースを読むなど、すべてを1つのアプリでできてしまう最強アプリなのである。

中国での支払いによく使われるWeChatは、このアプリに少額決済である「チップ」のシステムの導入も予定している。その一例として最近では「チップボタン」がニュースサイト10社で導入されており、メディアとコンテンツ制作者にお金が直接支払われる制度を実現している。また「払って読む(Pay to Read)」という機能も加えることで、定額費用を払うことなく、読みたい記事だけに少額を払うことも可能になると言う。

WeChatのコラムニストは一つの記事に平均して602ドル(約6万8千円)の収益があると述べており、これは雑誌社に文字数で記事を書いていた時よりも良い収入であるとのこと。WeChatでの支払いは2015年の11%のマーケットシェアから、現在では40%まで伸びを見せている。

これからの例以外にも、Facebookでは寄付金をFacebook上で集めることができる機能を導入するなど、少額決済を可能にするプラットフォームが増えつつある。この少額決済は、出版業界の未来と言えるのであろうか?見える金額は小さくても、散りも積もれば大きくなるように、「大きく考える」ことが大事である。これはデジタル化が進む出版業界において、ヒントになる市場の動きだと言えるだろう。